神楽坂会議 今までの勉強会から

ヒコーキ乗りと有事法制

村中哲也さん
航空連副議長
全日空B747航空機関士

自衛隊は国のしくみを守るためのもの

村中さんの写真

ぼくは、4年間海上自衛官で暮らしたんです。大幹部ではないから防衛庁の組織の基本的な方針にかかわってきたわけではないんですが、とてもまじめで優秀な自衛官だったからですね、いろいろほかの人とは違う教育も受けてきたんですよ。

 それでね、災害派遣なんかの場合には自衛隊の必要性とかいろいろ強調されたりして、国民が困った時には助けてくれるとみんな思ってるんだけども、たとえばですね、去年の9月11日にニューヨークでテロが起きた。このときに東海岸にあったアメリカ海軍の艦艇は全部太西洋に展開して、基地と国境の警護にあたったんですね。ニューヨークであんな大変なことにあって、猫の手も借りたいっていう時は、軍隊は助けてくれないわけなんですよ。

 そりゃそうなんです。たとえばですね。陸上自衛隊が、その部隊の長の命令、まあ、たてつけとしては内閣総理大臣が防衛出動を下命するっていうんですけど、防衛庁長官が実際にどこの部隊をどれだけの人数で、何時何分までにどこそこに到着させるように動かすってことをやるわけね。その命令は自衛官としては絶対なんです。ですから、自分がトラックに乗って目的地に運ばれるとか、あるいは自分が艦船を動かすっていうときに、もし、そこで火事があったり車に轢かれたり、そういう死にかけの人がいて、これを、救急車で持って行かなくちゃいけないというのは、人道的なんだけども勝手にやってはいけなんです、自衛隊ってのは。

 軍命(今はこんな言い方はしませんが)絶対なんですよ。自衛隊は、国のしくみを守るためにあるのであって、国民の生活を守るためにいるのではないのです。防衛庁が言う守らなければいけない「国」というのは、「国家」なんです。「国家」ってのは、森さんが「国体護持」といっていた「国体」というのものなんですよ。その国体を守ってはじめて、そのときに国民が守られるのですから、下々の生活や生命を優先して「国体護持」の活動といいますか、戦闘を忘れてはいけないんですね、自衛隊の論理とすれば。

 だからまあ、もっと比喩的にわかりやすくというか、乱暴に言っちゃえばですね、国民を守るために一生懸命になってたら、永田町の国会からなにからみんなつぶされたといったんじゃ元も子もないんじゃないかということや、自衛隊ががんばりすぎて全滅したら国民は誰が守るのかと、軍隊は最後まで残ってなければならないという論理になるわけですよ。笑ってらっしゃるかもしれないけども、これは防衛庁は大真面目なんですね。警察の手に負えないような場合には治安出動もやるっていうようなしくみになっているんですね。

  ですから、これ以上詳しくはいいませんけども、国民生活を守るというふうな場面はあるかもしれないですけどね、地震のようなときに。しかし、それよりも優先するのは軍命であって、国家の体制を守るために、内閣総理大臣、防衛庁長官の指揮に従って、良いか悪いか考えないで行動することがだいじなんですね。

軍隊の組織っていうのは、「こんなことやって良いんだろうか」って思っちゃいけないんですね。命令に従って忠実に実行するっていうことが、求められるんですよ。そのことが良いか悪いかっていう問題じゃなくって、軍隊とはそういうものだというふうに思ってもらいたいんです。そのための組織なんです。

で、ひるがえって「じゃあアメリカの在日米軍は日本を守るか」といったら、そんなことないですよ。在日「米軍」なんですから。彼らを指揮しているのはアメリカの大統領なんです。大統領が守るべきなのは、アメリカの国益なんですよ。京都議定書なんてアメリカの国益に反するから守らないって言ってるぐらいでしょ。そのブッシュ大統領がですね、日本が危ないから自軍を犠牲にしても日本を守るかと。そんなことないですよ。日本の国土が対中国と非常に狭い海峡を隔ててアメリカの自由主義圏を守るかどうかっていうのがアメリカの国益っていうことなんですね。そこんところを―これ、あのぼくの思想じゃないんですから、事実ですからね―日本人の多くがまちがえて受けとめているんではないか、ないしはそういうふうにまちがえるような説明を政府がし続けていやしないかというふうに、思うんですよ。あとはご自分たちで考えてみてもらいたいと思います。

なぜ民間人の動員が必要なのか

で、今お話になったような民間の動員がね、なんで必要なのかということなんですね。 *注今の自衛隊の隊員ていうのは約24万人いるんですがね、実際に戦闘行為の前線に出ていくのは、曹、士といって下士官から下なんです。そらそうですよ。金線を巻いてる偉い人が前線にいっぱい出ていってこの人たちがやられてつぶれてしまったら、自衛隊を誰が指揮するかっていう問題。さっきと同じですよね。自衛隊が先に死んだらあとの国民だれが守るかっていうのと同じような論法がここで働くわけであって、これはまあ、自衛隊という組織、軍隊ではあたりまえなんですよね。

曹、士っていうのは約19万人いるわけなんですが、そのほかに予備自衛官と即応予備自衛官というのがいます。これは民間人ですけどね。たかだかこんな軍隊でしかないわけなんです。そして、陸上自衛隊の航空機では輸送機というのはないんですよね。ヘリコプター程度なんですよ。それからあとは、海上自衛隊の飛行機でも、輸送機ってのはヘリコプターだけなんです。航空自衛隊の持っている輸送機っていうのはですね、C1というわりと小さい双発ジェット、最近安全性で問題になっていて廃機させなくてはならないっていわれていますが、これがだいたい25、6機あるかな。これは60人乗りですからね。それから一番大きいのがこないだパキスタンに持っていったC130ハーキュリーズっていうやつですね。プロペラまわしていくやつですけど、これが16機かな。これでも92人乗りなんですよ。

だから、何百人という部隊をですね、前線に一番近いところに早く持っていくっていうことは、日本の自衛隊は独自の輸送機ではできないんです。ジャンボ機だと550人くらい乗りますから、一回の輸送で550人の兵隊を持っていく、また床下に大きい貨物室がありますから、前線で必要な物資を同時に運ぶってことが可能なんですね。

輸送船団っていったって、海上自衛隊の持っている輸送艦艇といって、艦と艇っていうのは、まあ大きさが違うっていうふうに見てもらえばいいんだけども、艇なんていうのは、もう使い物にならないわけなんですよ。実際いざ戦闘ということになったらですね。輸送艦と艇と合わせて8隻しかないわけでね。しかも油を運んだりですね、戦車を持っていくというでっかい輸送艦なんてのはないわけですよ。船の上に大砲を積んでたり,機関砲を積んでるから邪魔でしょうがないわけですね。そんなにたくさんは運べないんです。民間の輸送船に依存せざるをえないんです。

あるいは,戦闘地域に近い所に、たとえば太平洋側から日本海側にものすごいたくさんの航空機燃料や船舶燃料を運ぼうっていったときにですね、トラックでは運べませんよ。鉄道で運ぶのが一番早いですよ。だから、JR貨物が使われるんですよ。
そういうふうに、民間の輸送に依存せねばですね、実際の戦闘というのはできないんですね。だから、そういうような法律を早く整備する必要があるっていうことです。

相手の論理を理解することが必要

ついでのことに言っとくと―こればっかり説明すると、あいつ自衛隊の味方なんじゃないかというふうに思われるかもしれないんだけど―相手の論理というのを正確に理解するという態度もね、ぼくは必要だと思うんです。
よく国会なんかで出されている、「今なぜ、日本が攻められる具体的な危険性がないのに、なんでこんな法律を作ろうとするんだ」というのはですね、戦争を絶対したくない側からみれば当然の疑問ですよ。しかしですね、自衛隊の側からみれば、そんなこと聞くほうがおかしいんですよ。

だってね、軍隊という組織ですよ、それが、何をするかといったら、戦争なんですよ。戦争をするために必要な法律整備が、自衛隊ができたときからなければおかしい。今日本が攻撃される危険性があるかないかなんてのは問題じゃないですよ。100年に1度であろうが、1000年に1度であろうが、そりゃ攻撃の危険性が0.1パーセントでもあれば、それを排除するための準備をするというのが、自衛隊なんですよ。それが防衛庁の論理ですよ。だから中谷さんがいろいろ平気で言いますよ、「3年や5年のタームではね、そんな危険性はないでしょうね」と。だけど「だからどうした」というこですよ。

自衛隊の論理はそうですよ。それをね、危険思想だっていう言い方は、それはぼくからみるとね、それは言ってる方もおかしい、もともと軍隊はそういうものだと、いうふうに思うんです。
ただ、そういう軍隊が日本にほんとになきゃいけないかというと、これは私の答える領域をはるかに超えてしまうからね。ただ、ぼくは、たかだか4年間の自衛隊の生活上ということだけでなくて、防衛庁側の論理からすればそうなんだということは、我々は知っとく必要があるんじゃないかと思います。

 後方支援については一言だけいっておきますと、後方支援というのはですね、戦略上きわめて重要な、ほぼ第一線活動なんですね。後方からの武器、食料、水、それから医療の支援がなければ、前線での戦闘は続きません。
そのくらい輸送っていうのは、非常に大事だっていうことなんです。だから後方地域安全論というのは、まったく成り立たない。後方支援を確保するというのも戦略のいろはであれば、そこを断つというのも、相手からみれば、前線闘争と優劣つけがたい重点なんだということですね。

飛行機乗りがなぜ有事法制に反対するのか

さて本題ですけれども、我々飛行機乗りがどうして有事法制に反対するのかということなんです。我々の声明や見解の中に、憲法違反とかですね、9条がどうのとかですね、安保条約が云々というのはひとつもでてこないんです。私も含めて元自衛官だとか元警察官、海上保安官などがいましてねえ、こういう組合員にね、憲法を守ろうなんていってもね、「憲法守るっておまえさあ、1条から8条までも守るんだろうな」なんていうことを言ってくる人もいるわけなんですよ(笑)。こりゃね、なかなかむずかしいんだよね。なに議論してるんだかわけわかんなくなっちゃうんですよ、だからもう言いっこなしっていうことで、意見が一致しないからね。百年たってもたぶん一致しないですよ。
もう自衛隊大好きっていう人もいてですね。予備自衛官もいますからね、この人に「自衛隊違憲」なんてことで「労働組合で一致せよ」なんて言ったって、こりゃむずつかしいですよ(笑)。

だけど、「テロハイジャックの標的になるような行動に賛成できますか」っていうと、これはねえ、できませんよ、飛行機乗ってる人間は。そういうことがないように、空港も警備を厳重にしてくれっていうふうに、ふだんから言っているわけなんですから。

9・11のテロのときは大ショックですよ我々。とうとうやられたっていう。自爆テロなんていうのね、防げませんもんね。それにね、「ロッカビー事件を忘れるな」っていう言葉があるんですがね、1988年の12月21日にですね、パン・アメリカン航空―もう倒産してなくなった会社ですが―のジャンボ機が、ロンドン―ニューヨークを行く時かな、スコットランド上空で空中爆発したんですよ。全員死にましたよ。ロッカビーという村に落ちたんだけども、ロッカビー村もずいぶん焼けてですね。村の人も何人か死んだんですね。 これはリビアの工作員が時限爆弾をしかけたのが原因だったんです。なんでそんなことをしたのかっていうと、2年前の86年にですね、アメリカがリビアの首都であるトリポリに空爆をしたんですね。この報復だったんですね。

圧倒的な軍事大国アメリカに対する報復ってのはこういう形でやるわけなんですよ。軍事基地なんか狙いませんよ、警備がきついしね、飛んで火にいる夏の虫状態ですから。民間空港とか民間の航空機というのは、警備が手薄ですよ。しかもパン・アメリカン航空というのは世界中を飛んでいますんでね。世界中飛んでるってことはですね、どこで何をしかけられるかわからないっていうことなんですよ。飛行機の世界っていうのはですね、今でもそうですが、いったん身体検査だとか荷物の検査だとか貨物の検査を受けてロビーなどに入っちゃうと、ここはクリーンエリアと呼ばれる領域になるんです。2度も3度も検査をやらないんですね・・・と聞いてですね、なんか悪さしようなんて考えたらだめなんですよ(笑)、あのう、その時は、やろうと思ったときは、「村中さんに聞きました」ってことだけは言わないでね(笑)、そんなこと言うと、えらいことになるんでね。

その前の年に大韓航空を爆破した事件があったの覚えてる方いらっしゃるかな、キムヒョンヒという女性がつかまって全部話したというの。これだって、要するに、通常の大きい空港だったら時限爆弾をしかけるなんてことやれないですよ。アブダビっていう、非常に(当時としては)警備が雑な空港でやるわけなんですよね。 こういうふうにね、世界中を飛びまわっている飛行機を守るっていうのは非常に大変なことなんですね。軍用機だったらどんな警備でもできるかもしれませんけれども、民間機の場合は、いろんな人が出入りする、いろんな貨物が降りたり乗ったりするという関係で、きわめてむずかしいんですね。そういう盲点をついて、テロがおこったというわけです。 だいじなことは、軍と軍の衝突の報復に民間航空が無差別に狙われたということなんです。そしてそれは、なかなか防ぎようがむずかしいということなんですよ。

「危ない飛行機にお客を乗せられない」

9月11日の恐怖というのは、我々は、第1に、一番大事にしている飛行機が武器に使われた、自分たちが守んなきゃいけないお客が人質にされたということです。しかし、それに対して戦争で報復するというアメリカの声明があったというのが第2のショック。小泉さんがそれを支持したというのが第3のショック。で、口だけでなくて、艦船を出すといった、そして出したというのが第4のショック。ブッシュ大統領は「テロをかくまうものもテロだ」と言ってるんです。テロの方からすればね、アメリカを手伝うのもアメリカだっていうふうに、言いますよ。ひじょうに、ぼくらはびっくりしました。これが私たちショックでした。

「テロやハイジャックの標的になるようなアブナイ飛行機にお客を乗せられるか」っていうのが、私達の言い分なのです。これには、元自衛官でも、予備自衛官でも、そりゃそうだというしかないわけですよ。それでもアフガンに行きたければ、会社やめて行ってきてくださいと。行くことを良いとは言えませんけども、止めはしませんよと。このくらいの議論が限度なんですね。ただ、日本周辺でね、いろんなことやられても、やっぱり困るんですね。

たとえば、88年の7月3日にですね、ペルシャ湾のホルムズ海峡というところでですね、えらいことが起こったんですよ。イラン航空のA300という民間の飛行機が、アメリカのヴィンセンスという巡洋艦からミサイル打たれて、撃墜されたわけですよ。戦闘機とまちがえられて。戦闘機なんかとまちがえるわけないんですね。スピードも違えば運動も全然違うんです。戦闘地域って、それぐらい、ふつうは起こらないようなミスが起こるところなんですね。私たちはそのホルムズ海峡事件も忘れられないということなんです。

「違法である」

もう一つは、違法だということです。あきらかに違法です。これは、みなさんにお渡しした資料に書いてありますから読んでおいてください。 *注国際民間航空条約というのがあってですね、これは第二次世界大戦でいろんな悲劇を積み重ねてきた世界の各国が、ふつうに使えば国と国との友好を育てるような道具としてきわめて大事なのに、軍事に使うために危ないことになるということから、民間航空の軍事利用というのは基本的にやらないということにしようじゃないかという条約を結んだ。これが、国際民間航空条約。44年にシカゴで結ばれた、シカゴ条約というものです。そして日本の航空法は、この条約に準拠して航空法を定めるということになっているんですね。だから、「基本的に軍事への協力はやらない」という原則なんです。

日本の民間航空、戦後再開して約50年になるんですが、軍事輸送には協力しないという歴史の方がはるかに長いんです。だから、テロに狙われるということもなかったんですね。ところが、1997年から変わったんです。これは、先ほどのお話にもありましたけども、97年に新ガイドラインが合意された。これは9月に合意されたんですが、実は、6月にですね、アメリカの海兵隊が嘉手納から横田まで移動する時に全日空の飛行機が二回使われたんですよ。 これは違法でしょ。だって、国際民間航空条約では「軍事に使わない」とある。第4条には、『民間航空の濫(らん)用』という標題をつけて、「各締約国は、この条約と両立しない目的のために民間航空を利用しないことに同意する」と、立派に宣言しているのにね、こんなことに使ってはいけないわけですよ。

全日空の経営者は「ビジネスだ」と言った。ビジネスというのは、金が儲かりゃ人殺しだって乗せるという世界ですよ。だけどこんなのはね、違法だと団体交渉で言ってね、我々は納得しませんでした。 運輸省に対しても、しつこく言いました。答弁不能になった政府はなんて答えたかというと、「これは、日米安保条約第6条に基づく地位協定5条に従って運航した」と、こう言うんです。で、詳しい説明は飛ばしますけど、要するに、アメリカの軍の指揮下で飛ばした。つまり、アメリカの軍のチャーターであれば、日本の法律は及ばないんです。政府はこう言わざるを得なかった。しかし、こんなことやられたら有事法制なんていらないっていう世界なんですね、私達の業界ではね。たいへんな問題になりました。

村中さんの写真

周辺事態法ができて

ところが、これだけではやはり終わりませんでした。先ほどご説明いただいたようにですね、1999年に周辺事態法というのが成立しちゃったのです。この周辺事態法案、さきほど先生からご説明あったように、ガイドラインというのは政府間の約束でしかないから、そのままでは、日本の国内でどうするかっていう法律整備がないわけだから、周辺事態法という国内法を作らざるを得ないんですね。これが、参議院を通過したのは、99年の5月の24日。ぼくは忘れもしませんよ、3年前の5月の21日には、宗教者と私たちが声を出してですね、明治公園で絶対反対だという集会をやったんですよ。でも、3日後には参議院を通過するってのもわかってました。負け戦集会ですよ。だから覚えてるんだよね。

ところがその1ヶ月後、6月25日にね、陸上自衛官300名が、定期便を使って、仙台と山形から千歳まで乗ったんです。迷彩服着てる、全員。考えてみてくださいよ、気持ちわるいでー(笑)。迷彩服着てねえ、いかついおっさんたちにねえ、「お茶どうですか」って配るスチュワーデスの身になってほしいと思うんですよ。

もしかしたら、有事法制が成立したら、彼らは銃を持って乗るかもしれないということなんですよ。そんな飛行機、どうして俺たちが飛ばせられるんだということですよ。ところがこれね、猛反対したんですがね。自衛隊は迷彩服は脱がなかったんですね。「移動すること自体が我々の訓練だ」って。軍事移動訓練のために民間の定期便を使うんじゃないよっていうのが、私たちの言い分。どうしても行きたきゃね、自衛隊の飛行機で行けって。しかし300名移動できませんもの、さっき言ったでしょ。一機に乗って92人ですよ。だから民間機を使うわけだよね。 猛反対しましたけども強行されました。やっぱり周辺事態法が通ったってのが政府と自衛隊の強みです。

その後2回ある。こともあろうにその年の11月には、こんどはアメリカの陸軍がですね、ごっそり移動したんですよね。350人くらいです。もう、もうたまりません、私たちは。これは、我々はまだ、違法だというふうに言いますよ。でも強行されてます。

ところが、周辺事態法は、国が、国以外の者、民間人や民間企業に対して、 「協力を求めることができる」とあるだけで、協力するかどうかは民間企業の側に裁量がありますよ、したがって強制はしてませんよ、と。とんでもないですよ。我々はさきほども言ったようにそれは違法だ、ということで、会社には応じないという回答を出せと迫りました。しかし、会社はですね、「国が要請をすればそれに答えるのが会社の基本的なスタンスだ」と言うんですよ。「どうしても軍事協力のための飛行機の運航をあなたが命ずるんだったら、我々はね、法律を守る、だからストライキで抵抗する」、こう言ったんですね。

そうしたら、「なんでもかんでも軍事行動だといってストライキをやるんであれば、断固として処分する」と言うんですよ、会社は。これは、強制じゃないですか。処分されるなんてぼくらね、家族養っていけないから、泣く泣く聞くしかなくなっちゃいますよ、ほとんどは。処分するって言われて、それでも闘うというのは、なかなかむずかしいですよ。処分する会社って、組織ですよ。それに抵抗するのは、現場のパイロット一名ですよ。一対組織で抵抗できますか。そりゃね家族にね「すまんなー俺と結婚して俺と一緒の家族だったのを不運と思ってあきらめてくれ」と言うわけに、なかなかいかないですよ。そういう現場にとっては、強制以外の何ものでもないですよ。もう既に周辺事態法の段階で、我々は強制されています。

それに有事法制で、もっと強い、協力を求められた企業の方は、これに答える「責務」があるっていうふうに言われればですね、「協力」の範囲でさえ「それに答えるのが基本的スタンスだ」って言っていた会社はですね、「責務」でより強く私たちに業務指示を出してくるということですね。そうすると私たちの側から言うとですね、「法律を守れ」と言ってた側とですね、法律を侵そうとする側と、立場が逆さになるんだね。俺たちはもともと「法律と国際条約を守れ」って言ってた、「それを守らない政府の命令には抵抗する」って言ってたら、有事法制で処罰されるっていう・・・あるいは有事法制じゃなくても、今の状態でいけば、業務指示違反でですね、処分されるわけですよ。なかなか、しびれますよ。

私たちは接着剤になりたい

だから、次のテーマ、最後になるんですが、「助けてください」と、いうわけね。今すぐ、今日「反対」って立ちあがってくれなくていいから、勉強してですね、なにが正しいかを判断してもらいたいのよ。で、「俺も反対する」「私も反対だ」という人には、助けてほしいわけよね。どうやっても淋しいからね、現場の労働者は。

だから、20労組でもってですね、20労組っていうのは、そのレジュメに書いてありますように、輸送関係労組です、全部ね。 *注海と、空と、陸と、それと港湾の人たちなんですね。トラックもいれば、鉄道もいればですね、船員もいれば、通信士もいれば、飛行機乗りもいれば、整備士もいれば、荷物運びも全部揃って、「これは大変だ、こんなことやられたら、なにもかも狂ってしまう」、「自分たちも攻撃の目標になりかねない」と考えた。

そりゃそうですよ、後方だけでね、前線に行かないなんて言ったって、飛行機飛んで、公海上空でね、日本の自衛隊やアメリカの軍隊に飛行機からもの渡すということはできませんよ。前線の基地まで飛ばざるを得ませんよ。船だって、公海上で荷物だけをね、渡すなんてことはできませんよ。相手の国の、港まで行かなきゃ。後でお話になるんでしょうけども、自衛隊の飛行機持っていけばですね、飛行機の整備やるのは、基本的に自衛隊の整備士だって言ったところで、たいした整備士はいないから、石川島播磨からね、高等技術を持った整備士がね、前線に行かないと、飛行機が故障した時に直せませんからね。

そうやって戦争協力に使われる人間を集めてですね、まず反対しようじゃないかと相談したんです。

ぼくらの陸海空港湾20っていうのね、連合、全労協、全労連、その他の中立組合の集まりで、よくわかんない組織ですね。だけど、有事法制反対ということだけで一致できるという組合どうしなんですよ。労働組合って本来こういうものだっていうのが、ぼくの意見。何党支持なんてね、労働組合ってのは要求で金取ってくるのが生命線なんであってね、何党を当選させるかなんてのはね、個人の自由だってことです。

20労組はね、なぜ名乗ったかっていったら、俺たちが名乗りをあげれば、労働組合や、路線の違いでくっつけない人たちみんなくっついてくるって思ったからなんですよ。結果はかなりそうなっている。市民団体も、仲の良くない団体もあるんだけども、ぼくらが呼びかけて「一緒にやろう」と言えばですね、集会での場所は離しておかなければならないのだけども(笑)、とりあえず同じ集会には集まるんですよ。で一緒にね、わあわあってやるんですよ。まあ、その日だけやってくれればいいと考えています。デモもその人たちは一緒にしないからと(笑)。これなかなか苦労があるんだけど、だからこそ、万の単位で集まってくるのだと思うんです。

20労組は英雄になりたいわけじゃないんです。そうやって、接着剤になって、みんながくっついてくれれば、とりあえずおれたちは孤立しない。だからまあ、相身互いということでしょうかねえ。そういう共同こそがね、今ぼくはだいじだというふうに思ってるんですね。それは、間違いなく、前進したっていうふうにも思っています。

最後の課題で、国民のこういう運動は政治を変えられるだろうかっていうことなんですが、私は「変えられる」って言い続けています。ほんとに変えられるかどうか、それはね、今日のテーマでもありましょう。みなさんで討論してください。ぼくがね、講義をするような性格のものじゃないです。みなさんが変えられないと思っても、俺はやめないから。 以上です。


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