神楽坂会議 文献集

連合軍暫定当局第17指令
 連合軍、外国連絡使節団、その人員および受託業者の地位

原文: Coalition Provisional Authority Order Number 17
Status of the Coalition, Foreign Liaison Missions, Their Personnel and Contractors

翻訳:南 恵 



連合軍暫定当局(CPA)の長官としての権限に基づき、法と戦争使用法の下に、また決議1483(2003年)を含む関連の国連安保理決議に整合した形で、

国際法の下においては、占領軍を含む占領国群、人員、所有物、設備、資金および財産は、占領地域の法域外、管轄外であることを想起し、

イラクが苦痛を取り除き、回復し、発展することができるように安全保障と安定に貢献するために、国々が人員、設備、その他の資源を連合軍に提供しているということを意識し、

国々が外国連絡使節団人員をイラクに派遣していることに留意し、

CPAと現地の裁判所において、上記のような連合軍と外国使節団人員の立場が確立され確認される必要性を意識し、

私はここに以下のことを公布する。

第一条 定義

1)「連合軍人員」とは、司令官、連合軍、連合国に採用された全ての軍に配属された、またはその指揮下にある、イラク人ではない全ての軍および文官を意味する。これには、ここに配属された文民と、CPA長官に任命された、またはCPA長官の指揮下・管理下にあるイラク人以外の軍・文官が含まれる。

2)「外国人連絡使節団人員」とは、CPAの監督下においてイラク外務省に外国人連絡使節団人員の身分証明書を発行された個人のことを指す。

3)「法的手続き」とは、刑事上、民事上、行政上、その他の本質のどれにせよ、イラクの裁判所またはその他のイラクの機関による逮捕、拘留、法的手続きを意味する。

4)「提供国」とは、連合軍の一部として連合軍人員を提供している国、または外国人連絡使節団人員を提供している国のことを指す。

5)「連合軍受託業者」とは、契約の取り決めに基づいて連合軍・CPAに、もしくは連合軍・CPAを代行して、物品やサービスを提供している、通常イラクに在住していないイラク人以外の企業体または個人のことを指す。

6)「連合軍下請負契約者」とは、契約の取り決めに基づいて、連合軍受託業者に、もしくは連合軍受託業者を代行して、また連合軍・CPAの活動に関連して、物品やサービスを提供している、通常イラクに在住者していないイラク人以外の企業体または個人のことを指す。

第二条  連合軍および外国人連絡使節団人員

1)CPA、連合軍、外国人連絡使節団、その所有物、資金、財産は、イラクの法的手続きから免除される。

2)全ての連合軍人員、外国人連絡使節団人員は、イラク領土における連合軍人員および外国人連絡使節団人員に適用されるイラクの法律および、CPA長官が発行する規定、指令、覚書、公示を尊重する。

3)外国人連絡使節団人員は法的手続きから免除される。

4)全ての連合軍人員はその提供国の独占的な裁判権の対象となる。彼らは現地での刑事上、民事上、行政上の裁判権から免除される。またその提供国を代行する人物によるもの以外はいかなる逮捕、拘留からも免除される。ただし、この規定のどれも、連合軍人員による深刻な不正行為を連合軍が防いだり、彼ら自身やその他の人に被害を加える危険を引き起こした連合軍人員をその提供国の適当な当局に迅速に引き渡すまでの間一時的に拘束したりするのを妨げるものではない。このような全ての状況において、拘留された人員が所属する国の派遣団の司令官は即座に通知を受ける。

5)提供国に該当する刑事制裁が無い行為をイラクにおいて犯した連合軍人員については、CPAはそのような行為をイラクの法律に基づいて審理するため、提供国に裁判権の放棄を求める。その場合、CPA長官の許可書無しに法的手続きを開始してはならない。

第三条 受託業者

1)通常イラクに在住していない連合軍の受託業者、その下請負契約者、その被雇用者は、連合軍またはCPAに関する契約の条項に関連した問題についてはイラクの法律・規定の対象にはならない。通常イラクに在住している受託業者および下請負契約者以外の連合軍受託業者と下請負契約者は、上記のような契約に関連した被雇用者、商取引、企業のライセンス供与および規定に関しては、イラクの法律の対象とならない。

2)通常イラクに在住していない連合軍受託業者、その下請負契約者、その被雇用者は、受託業者と連合軍、またはCPAとその下請負契約者との間で結ばれた契約の条項に基づく職務上の活動の範囲で行う行為に関しては、イラクの法的手続きから免除される。

3)通常イラクに在住していない連合軍受託業者、下請負契約者、その被雇用者による行為や不作為に関して、もしそれらが彼らの間で、または連合軍やCPAとの間で結ばれた契約の条項に基づいた職務上の活動中以外で行われた場合には、CPA長官の許可書無しにイラクもしくはCPAの法的手続きを開始してはならない。

第四条 法的手続きからの免除期間

現在の指令により連合軍人員、外国人連絡使節団人員、通常イラクに在住していない連合軍受託業者、下請負契約者、その被雇用者に与えられた法的手続きからの免除は、CPAに権限のある期間における行為および不作為に関してのみ与えられる。

第五条 法的免除と裁判権の権利放棄

1)連合軍人員、外国人連絡使節団人員、通常イラクに在住していない連合軍受託業者、その下請負契約者、その被雇用者に与えられた法的手続きからの免除は、関係する個人に利益を与えるためのものではなく、提供国によって権利放棄される可能性がある。

2)連合軍人員または外国人連絡使節団人員に対する裁判権の放棄に関する要請は、それぞれの提供国に対して諮問される。

3)通常イラクに在住していない連合軍受託業者、下請負契約者、その被雇用者に関する法的免除の権利放棄に関する要請は、この指令の第三条に述べられているように、受託業者が契約したそれぞれの提供国に対して諮問される。

第六条 申し立て

1)所有物の損失・損害、個人の損傷、疾病、死亡、またはそれ以外の連合軍人員やその被雇用者に発生した、もしくは彼らに起因した問題に対して第三者が申し立てを行った場合、その申し立ては、通常イラクに在住しているか否か、または軍の戦闘活動に関係しているか否かに拘わらず、申し立てられた損害を引き起こしたとされる連合軍人員、所有物、活動、その他の財産の提供国に提出され、提供国の法律と整合した形で対処されなければならない。

2)所有物の損失・損害、個人の損傷、疾病、死亡、またはそれ以外の外国人連絡使節団人員に発生した、もしくは彼らに起因した問題に対して第三者が申し立てを行った場合、その申し立ては、申し立てられた損害を引き起こしたとされる外国人連絡使節団人員、所有物、活動、その他の財産の提供国に提出され、提供国の法律と整合した形で対処されなければならない。

第七条 発効

この指令は署名された日に発効する。

連合軍暫定当局
長官 L.ポール・ブレマー

2003年6月27日


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