この段落の要旨は、国家の管理強化を求めていて、全体の論旨とそぐわない印象が あるかもしれません。これは、国際人権規約(A規約)の条文に沿って、国家のなす べきことを述べているためです。  国際人権規約(A規約) 第13条3項および4項は、教育機関を設置する自由 と、親が教育を選ぶ権利を保障していますが、その教育機関は 「国によって定めら れる最低限度の教育上の基準」に合っていることを求めています。

人権規約の公式解釈54に

締約国は、「教育上の最低基準」を設定する責務がある。第13条3項と4項に合致 して作られた教育機関は、この最低基準に適合することが求められている。 締約国は、そのような最低基準の実情を調査するため、透明で効果的なシステムを維 持しなければならない。

とあります。

 日本の場合、実質的に国の定めるただ一つの教育基準しか存在していません。「最 低限度の教育上の基準」は、多様性を前提としてできます。日本政府は「最低限度の 教育上の基準」を設定していなくて、そのため、この段落の要旨は、日本の実情とは そぐわないものになっていると考えています。

古山明男 akiofrym@sag.bekkoame.ne.jp