人間を「人的資財」と定義することの問題に関して、予備報告13.には、以下のように書かれています。

13.
・・・しかしながら、経済学者の中には、教育を人的資財の効率的な手段とみなし、人権という側面をす べて教育の外側にあるものと規定する人もいるでしょう。人間を「人的資財」と定義することは、 人間を「権利の主体」と定義することと異なります。

身体的障碍、知的障碍のある子どもたちを例に取れば、人権からのアプローチと、人的資財からのアプローチと の対照が、くっきりと浮かび上がってきます。

身体的障碍のある子どもたちは、たとえば「車椅子のための設備を整えるのにお金がかかりすぎる」 という理由で排除されるかもしれません。 知的障碍のある子どもたちは、「彼らの学ぶニーズを満たしたとしても、その投資に対する最低限の みかえりを見込むことができない」ということで、学校教育から排除されるでしょう。

こうした類の理由付けは、あきらかに、人権の大前提である、すべての人が平等な価値を持つ、という ことに反します。

したがって、特別報告官は、「教育」と『教育への権利』との違いを強調することに重点を置きました。 そして、教育が、人権からの要求に適合することをめざすように変化するよう、主張するための背景 を創り出そうとしています。

伊藤美好 miyoshi@itoh.org